スペイン巡礼#5 嵐のピレネー越えで仲間とはぐれる
2015年5月1日
朝6時に迎えの車に乗る。英語を話せるほうのおじさんが来てくれた。
サンジャンピエドポーのカミーノオフィスの休憩室でチーロが来るのを待っている間、嵐が来そうなこと、アルベルゲ(巡礼宿)では貴重品を寝袋に入れることなど、いろいろ教えてくれた。
誰かがドアをノックした気がして、おじさんに見に行ってもらうと、チーロが来ていた。再会を喜ぶ。おじさんに丁寧にお礼を告げ、出発する。
チーロは「初日だね!始まったね!」とテンション高めだ。
チーロは昨日オフィスで予約してもらった宿が見つからず、別の宿で寝たらしい。近くの男性のいびきがうるさくてあまり眠れなかったそう。可哀そうに。
しばらく歩いて、ほとんど村の外で彼が泊まるはずだった宿、ナポレオンを見つけた。村を出るとすぐ上り坂だ。ピレネー山脈に向かってどんどん登っていく。
はじめは曇り空で、穏やかなスタートだったが、しばらくして雨が降りだし、風も出てきた。風はどんどん強くなり、おじさんの言った通り嵐となった。上り坂はキツイし、風は吹き飛ばされそうに強いし、雨と霧で寒いし、景色も遠くは見えない。恐ろしい巡礼初日となった。雨やら鼻水やらで顔はぐしゃぐしゃ。ここで立ち止まったら死んじゃう、と思った。チーロが振り返るたびにニカッと笑顔を見せてくれるので、彼がパワーをくれた。
他の巡礼者も頑張っている。タンクトップ一枚で歩く女性もいてびっくりした。チーロが「彼女は人間じゃないな」と冗談を言い、周りを笑わせていた。北の国の人かと思ったが、彼女はオランダ人だった。
途中マリア像があり、チーロは少し道をそれて近くまで見に行ったが、私にはその元気がなく遠くから眺めるだけにした。立ち止まっていると寒くなってきたので、ウィンドブレーカーの下にフリースジャケットを、下はズボンの上にレインウェアのズボンを重ね着することにした。風雨の中で大変だったが、戻ってきたチーロが手伝ってくれた。
山頂手前で、チーロとはぐれてしまった。気付いたら前を見ても彼の姿が見当たらず、いやに足が早いなと思いつつ、一人で歩き続けた。一番キツイ上り坂を越えたところで、他の巡礼者とモニュメントの前で写真を撮っていると、後から来たチーロが「りっか!」と叫んだ。後ろにいるとは思わなかったのでびっくり。はぐれたとき、私は風雨のため帽子のつばを手で押さえており、チーロが食べ物などを売る車に寄ったのに気づかなかったのだ。
「さみしかった?」といたずらっぽく聞かれ、「うん」と答えた。
そのすぐ後、一人で歩くドイツ人のヴィルマちゃんと出会った。21歳。目が合うとニコッと笑ってくれる可愛い女の子だ。英語も話せる。チーロとヴィルマは私より歩くのが少し早かったが、チーロがたまに待っていてくれたりして、なんとか付いていくことができた。
ロンセスバージェスの建物が見えたときは、やっと着いた、という思いでホッとした。
もう動けない、と思ったがそうも言っていられない。宿に着いて受付を済ませたら、ベッドを確保し、シャワーと洗濯。そして巡礼者のためのミサに参加。チーロはミサの途中、顔の前で十字を切っていたので、きっと敬虔なクリスチャンなんだろうなぁと思って見ていた。
その後チーロと宿の中にあるレストランに行き、巡礼者メニューを食べた。
巡礼路上の町のレストランには大抵10ユーロの巡礼者用のメニューがある(ペリグリーノメニュー)。前菜・メイン・デザートのコースであることが多く、お得♪
前菜はひねった形状のパスタ、メインは魚の塩焼き、デザートはお米のプリンだった。お米のプリンの見た目はタピオカヨーグルトみたいな感じ。日本人的には見慣れないデザートだが、欧米では人気らしい。味は悪くない。
ベッドに戻ると、私とヴィルマの間のベッドの人が大いびきで寝ていた。思わずヴィルマと顔を見合わせて笑ってしまう。周りの人が気を使って私に耳栓を貸してくれようとしたが、行きの飛行機で貰った耳栓があったのでこれを使うことにした。・・・あまり効果はなかったが(笑)。
チーロと翌朝の出発時間を決めていなかったが、少し目をつむったら深い眠りに落ちてしまいそうになる。まぶたの裏で光がチラチラする。チーロが私の顔の前で手を振っていた。揺すって起こさない気遣いが素晴らしい。チーロがベッドで横になったままの私に顔を近づけて、明日は6時に出発しようと言った。
その後濡れた靴を乾かすため、持参のトイレットペーパーを靴に詰めに行ったあと、寝た。大いびきの男性が静かなうちに眠れたのか、疲れていて気にならなかったのか・・・。
つづく